手付売買には仮登記を
| 1.不動産売買の商慣行の一つとして、手付金を支払って売買することがあります。 通常、土地の売買は、後から地積が不足していたり、隣地の所有者と境界でもめたりしないように、土地家屋調査士が地積測量をしたり、境界画定をし、その後、代金精算、所有権移転登記へと進みます。この測量費用の負担は通常、売主負担であり、難易度にもよりますが30万円から50万円ぐらいが相場だと聞いています。期間は道路査定 (道路と私有地の接する部分は、市役所側も利害関係を持っており、その部分を確定する行為) が入ると一ヶ月半ぐらいかかります。 そこで、測量に入る前に商慣習として売買代金の一割位が手付金として、買い主から売り主に交付されます。これは解約手付と解されており(民法557条・判例)、買い主は手付金を放棄して、また、売主は手付金の倍返しをして売買契約の解除が出来ます。 この手付金を交付するしないは、契約事由の原則より当事者の自由ではあるわけですが、測量等が入ると、引渡し、代金精算までに時間がかかるため、契約を強固にする趣旨で手付金が払われるわけであります。 ![]() 測量、境界画定をせずに売買することを現況有姿売買と言い、手付金を交付せず、一回で売買契約(代金精算・引渡・所有権移転登記)を終了いたします。 2.さて、この手付がくせ者なのであります。この昨今、倒産件数が毎年上昇している様を見れば多くを語るまでもないでしょう。手付交付してから売り主側の経済事情が悪化する場合があるということです。もしくは好条件の買い主が現れて、そちらと二重契約をし引き渡してしまうと言うことも考えられます。これは二重売買といわれます。 もし、手付交付してから残代金精算、引渡迄の間に、売主が倒産すると、その交付した手付金の回収、もしくは引渡、所有権移転登記に大変な困難が予想されます。 その対応策が仮登記であります。仮登記とは、代金全額支払った時に為す本登記と違い、対抗力はありませんが、順位保全効(順位保全効とは最終的にその順位を保持でき、順位劣後する担保権や所有権移転登記に勝てると言うこと)があり、手付交付後、売主が失踪したり、二重譲渡したような場合には仮登記が後になって生きてきます。また、売主が手付交付後に破産しても破産管財人に対し、所有権移転本登記を求めることが出来ると解されています(参考 破産法55条1項、判例通説)。破産をしない倒産であっても仮登記があることによりいわゆる足枷をつけたことになり、:競売手続を中止に持ち込め、残代金と引き換えに、担保抹消、所有権移転へと運ぶことが出来ます。 私はこの資本主義経済社会の中で、代替する対価物なくして、金銭が移動してはならないと思っています。現行商慣習における不動産売買の場合では、手付金を支払った買い主に、手付金に代替する対価物は何もありません。領収書一枚です。勿論、手付の効果として、売主が解約する場合には倍返しがあるといっても、倒産した売主に対しては所詮、画餅であります。 手付に対応する対価物は仮登記でしかありません。しかし、日本の商慣習ではそれなくして手付売買が為されているのが現状です。私は、司法書士業に身を投じてから今に至るまで、社会がこのアンバランスにあまり関心を示していないことを不思議に思ってきました。理由として考えられるのは、確かに右肩上がりの経済下では事故の絶対数が少なかったのでしょう。クレジットで足り、それが商慣習を変えるに至らなかったのかも知れません。 3.しかしこの時期、不良債権処理等色々な形で、不動産が金銭と交換されていきます。通常の売買であったり、不動産競売であったりします。しかし、そのバックグランドでは何が動めいているのかは分からないのです。 これをお読みの賢い土地購入者は、どうか遠慮なく仲介の不動産業者に手付けには「仮登記を」と申し出て下さい。 融資の金融機関も同じ関心をお示しいただきたいと思います。司法書士会、宅建業協会もこの趣旨を社会に強く訴えていくべきものと考えます。 |
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